食生活と乳がん再発

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肥満は乳がん再発リスクと関連がありますか?
乳がんと診断された時の肥満について
 
乳がんと診断された時に肥満であったかどうかが、乳がんの再発リスクと関連するかどうかを調べた報告はたくさんあります。それぞれの研究で肥満をどのように定義するかに若干の違いはありますがほとんどの研究で肥満の患者さんの乳がんの再発リスクは1.4~1.8倍高いことが示されています。その原因としては、肥満の患者さんではホルモン療法のアロマターゼ阻害薬の効果が劣る可能性があること、術前の化学療法の効果が劣ることなどが考えられています。

乳がんと診断された後の肥満について
 乳がんと診断された後に体重が増加した患者さんで、乳がん再発リスク、死亡リスクを調べた報告はわずかしかありません。ただ、その中の信頼性が高い報告では、体重が約5kg以上増加すると乳がん死亡リスクが1.6倍程度増加することが示されています。

 以上より、すべての乳がん患者さんで、適切なカロリー摂取と適度な運動により肥満を避けることが強く勧められます。また、今現在肥満の患者さんには、健康維持の観点から体重コントロールをお勧めします。

脂肪の摂取は、乳がん再発リスクと関連がありますか? 
 
肥満と乳がん再発リスクには明らかな関連が示されています。では、肥満を招く恐れのある脂肪を置く含んだ食事を取ると乳がん再発リスクが増加するかどうか、この点を検討した報告は多くありません。ただほとんどの研究で、脂肪を多く含んだ食事接種と乳がん再発リスク、死亡リスクとの間に関連は認められませんでした。

 ただし、脂肪を含んだ食事を取ると太りやすいのは事実です。そして肥満が乳がん再発リスクを増加させるのは明らかです。脂肪摂取そのものが再発リスクを高めるわけではありませんが、日常生活において大切なことは、過度に脂肪摂取を制限するのではなく総カロリー摂取を制限し、適度な運動によって肥満を避けることです。必要以上に肉などの脂肪を含む食事を避けるのではなく、毎日たくさん食べない、総カロリーを調整する、運動でカロリーを消費するなどのバランスをとる工夫によって太らない様に注意することが必要です。


アルコール飲料の摂取は乳がん再発の危険因子になりますか?
 飲酒により乳がん発症リスクが高くなることはほぼ確実です。しかし治療後の飲酒が乳がん再発リスクと関係するかどうかについての研究は多くありません。また、その結果も一致していないことから、現時点ではアルコール飲料の摂取が乳がん債八リスクを高めるかどうかについては結論が出ていません。
 ただし、飲酒は今回治療を受けていない乳がんの発症リスクや、ほかのがんの発症リスクも高めますので、お酒は飲まないか、飲む場合も控えめにすることは大切です。

乳製品の摂取は乳がん再発の危険因子になりますか?
 
乳製品全般の摂取によって乳がん発症リスクが低くなる可能性があると近年言われています。では、乳がんと診断された患者さんでは、乳っ製品の摂取と再発のリスクの関連性はどうでしょうか。乳がんと診断された時にバターやチーズなどの乳製品を多く摂取していた患者さんとそうでなかった患者さんの再発リスクの比較、そして乳がんと診断されてから乳製品を多く摂取した患者さんとそうでなかった患者さんの再発リスクの比較に関しては、少数ではありますが研究報告があります。いずれも乳製品の摂取と再発リスクの関連性は明らかではなかったと報告されています。しかし、研究の数が少なく、一定の結論を導き出すのは現時点では困難です。一方で、乳製品が多くの脂肪を含むのは事実で、大量の乳製品の摂取は肥満を招く恐れがあります。乳がんと診断されてから肥満になった患者さんの乳がん脂肪理数が高いことはほぼ確実ですので、乳がん患者さんにおける乳製品の摂取に関しても、肥満を招かない程度の適量の摂取が望まれます。

大豆製品の摂取と乳がん再発リスクについて教えてください。
 
通常の食事における大豆食品やイソフラボンの摂取では乳がん発症リスクが下がる可能性があります。では、乳がん再発リスクとの関連はどうでしょうか?現時点ではこれに関する研究は非常に少なく、中国での研究が4つ、米国での研究が2つあるだけです。しかし、これらの研究では一貫して、大豆イソフラボンの摂取が多い患者さんは、すくな患者さんと比較して、乳がん再発リスクが低かったことが報告されています。特にホルモン療法を受けていた患者さんやホルモン受容体陽性の患者さんでその傾向が強かったとされています。また、3つの研究では、大豆イソフラボンを多く摂取していた患者さんにおいて、これによる有害な出来事はなかったことが報告されています。

 いまだ研究は限られていて、日本人を対象とした研究もないのですが、大豆イソフラボンの摂取で乳がん再発リスクが低くなる可能性もあります。しかし、再発リスクを下げる目的でイソフラボンをサプリメントの形で多量に摂取することは安全性が証明されていませんし、その効果も不明ですので勧められません。通常の大豆食品から摂取することを心がけましょう。