経済的支援について

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 医療費負担を軽減する制度はいくつかあり、その代表的なものとして「高額療養費制度」「医療費控除」「傷病手当·雇用保険」「障害年金·生活保護」などがあります。

 また、1年間に支払った医療費に対して手続きをすることで所得税が戻ってくる「医療費控除」という制度が利用できます。

高額療養費制度
 「高額療養費制度」とは、医療費の負担を軽減できるように作られた公的医療保険の制度です。医療機関や保険薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた金額が支給されます。事前に手続きをして窓口で支払う金額を減らせる方法と、事後に手続きをして後日払い戻しを受ける方法があります。
(1) 事前に手続きをする場合
事前に、加入している公的医療保険で「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関や保険薬局の窓口に提示すると、窓口での支払いが自己負担限度額までになります。一度に多額の医療費を支払わなくて済み、後で高額医療費の払い戻し申請をする必要がありません。「限度額適用認定証」は、介入している保険者が発行します。(表1)
(2) 事後に手続きをする場合 
 自己負担額(健康保険の自己負担割合分)の支払い後に、高額療養費(自己負担限度額を超えた分)の払い戻し申請が必要です。申請は、医療機関にかかった翌月以降、高額医療費の該当月ごとに申請をしてください。払い戻しされるのは3か月以上後になります。申請を忘れてしまった場合にも、払い戻し申請は2年までさかのぼって行うことができます。

 原則として本人からの申請が必要で、加入している保険者に申請し、保険証·印鑑·病院で支払った領収書·振込口座のわかるものを窓口に持参して下さい。必要書類は保険者の窓口においてあります。

 

1 公的医療保険の問い合わせ先

医療保険の種類

対象者

問い合わせ先

健康  保険

組合管掌健康保険

(組合健保)

 

 

会社員とその扶養家族

各健康保険 組合担当窓口

全国健康保険協会管掌健康保険

(協会けんぽ)

全国健康保険協会

国民健康保険

農業、自営業者、自由業者、会社を退職して健康保険等を脱会した方

市区町村の

担当窓口

国保組合を組織する業種で働く方

各国保組合 担当窓口

船員保険

船員とその扶養家族

全国健康保険協会船員保険部

共済組合

公務員、一部独立行政法人職員、日本郵政公社職員、私立学校教職員

各共済組合

担当窓口

 


 負担の上限額や高額療養費を計算する要件は表2、3の通りとなっています。更に、「世帯合算」、「多数回該当」、「貸付制度」、「委任払い制度」といった仕組みにより、最終的な自己負担額が軽減されます。詳しくは、加入している保険者にお問い合わせください。

 食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用、診断書などの書類作成費用などは高額療養費の算定対象にはなりません。

2 高額療養費制度の自己負担限度額

70歳未満の方】

対象者

自己負担限度額(月額)

13回目

4回目以降

上位所得者

150,000+(医療費-500,000円)x1%

83,400

一般

80,100+(医療費-267,000円)x1%

44,400

低所得者

35,400

24,600

 

70歳以上の方の場合】

対象者

自己負担限度額(月額)

世帯単位(入院・外来)

個人単位(外来のみ)

現役並み所得者

80,100+(医療費-267,000円)x1%

4回目以降 44,400

44,400

一般

44,400

12,000

低所得者Ⅰ

24,600

8,000

低所得者Ⅱ

15,000

8,000

所得区分については、加入している保険者にお問い合わせください

直近の12ヶ月間に、すでに3回以上、高額療養費の支給を受けている場合(多数該当の場合)に   

 は、その月の負担の上限額がさらに引き下がります。

 

3 高額療養費の計算要件

月単位で計算

該当月の初日から月末までを1ヶ月として計算

医療機関ごとに計算

複数の病院、診療所で診察を受けた場合は、それぞれ別に計算

医科と歯科の区別

医科と歯科は別計算

入院と外来の区別

入院と外来は別計算

 

 高額療養費については、加入している保険者のほか、医療機関においても、医療相談窓口、医療ソーシャルワーカーなどに相談することができます。名古屋市立病院では医療社会事業部にご相談ください。

医療費控除
 本人または家族(生計を一つにする親族)が、前年(1月1日~12月31日)に支払った医療費が10万円を超えた場合に申請をすれば税金の一部が戻ってくる制度です。医療費控除は、会社の年末調整ではできないため、自分で確定申告をする必要があります。その際には医療費の領収書などを添付します。

 申請は、お住いの管轄の税務署になります。

医療費控除の計算方法

 

年間に

支払った

医療費の

合計額

 

 

 

・民間保険で

 支給される給付金

・健康保険から

払い戻される

高額療養費など

 

 

10万円または

所得金額が

200万円未満の方はその金額の5

 

 

 

医療費控除額

200万円まで)

 

《ポイント》

・がん治療によって給付された民間保険費等は、そのがん治療でかかった医療費から差し引きますが、それ以外の医療費からは差し引く必要はありません。

・会社員など確定申告を行っていない方は、過去5年間についてさかのぼって申告が可能です。

医療費控除の対象となる医療費の例

控除できるもの

控除できないもの

*医師、歯科医師による診療費、治療費

*医師等の診療を受けるために直接必要な費

用(バスや電車を利用した場合の通院費、

必要な場合に部屋代、食事代、医療用器具

の購入費や貸与の費用)

*薬代(薬局で購入した市販薬などを含む)

*治療のためのあんま・マッサージ・指圧

師・はり師・きゅう師・柔道整復師による

施術費用

*人間ドック・健康診断の費用(検査の結果

 病気が発見された場合は対象となる)

*自家用車通院の場合のガソリン代

*本人、家族の都合による個室料

*ウィッグや、専用の下着の購入費

*病気の予防や健康増進のための医薬品の購

 入費

*入院に際し購入した身の回りの品

 
傷病手当金

 病気やけがのために連続して会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合、その間の所得保障として「傷病手当金」が支給されます。傷病手当金制度は、休業中の生活を保障するために、健康保険制度の被保険者、共済組合制度の組合員等が支給の対象です。扶養家族は支給の対象にはなりません。(お勤めされている「本人」が支給の対象です)が、一部国民健康保険組合では扶養家族にも支給される場合があります。

傷病手当金が受けられるとき
 病気やけがのために働くことができず、仕事を休んだ日が連続して3日間あって(この3日間を待期期間といいます)、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
 支給期間は、支給を開始した日から数えて最長1年6か月です。(途中で仕事に復職した期間があっても支給開始日から1年6か月までの支給となります。)
 退職日に傷病手当を支給しているか、受給できる条件を満たしている場合には、退職後も引き続き受給できる場合があります。ただし、退職日に出勤したときには、退職後も続けて給付する条件を満たさなくなってしまうため、注意が必要です。
支給される金額
 病気やけがで休んだ日、1日につき、標準報酬日額(およそ1日分の給与)の3分の2相当額です。ただし、休業中でも報酬がある場合などは、支給額が調整されることがあります。
申請窓口
 申請者は被保険者、組合員です。実際は職場の担当者が手続きをしてくれる場合が多いようですので、職場の担当者に聞いてみましょう。

 

医療保険の種類

対象者

問い合わせ先

健康保険制度

民間企業の会社員

協会けんぽ(全国健康保険協会)

加入している各健康保険組合

共済制度

公務員・教職員など

加入している各共済組合

 
雇用保険

 何らかの理由で仕事を辞め失業した場合、雇用保険から「基本手当」が支給されます。これは一般的に「失業保険」や「失業手当」と呼ばれているもので、再就職までの間、生活を支援してくれるものです。すぐに働けない場合は、受給を先送りすることもできます。

基本手当とは
 基本手当は、失業中の所得保障をすることで、再就職までの生活を安定させ、安心して就職活動を行えるよう支援するものです。基本手当をどのくらいの期間受けられるか(給付日数)は、年齢、被保険者期間、離職の理由によって異なります。また、1日当たりの基本手当の支給額は、お勤めをしていた時の給料や、離職時の年齢によって異なります。
基本手当を受けられる期間は?
 基本手当は受給できる期間が決まっています(受給期間)。受給期間を過ぎてしまうと給付日数が残っていても受給できません。受給期間は原則として離職した日の翌日から1年間です。

すぐに再就職できないときは?
 ハローワークに来所し、求職の申し込みを行い、就職しようとする意志があり、いつでも就職できる状態であることが給付の条件になっています。
 しかし、病気療養中などですぐには就職ができそうもないとき、手続きをしないまま受給期間の1年を過ぎてしまうと、基本手当を受給することができなくなってしまいます。このような時は、受給の開始を先延ばしにすることができます(受給期間の延長)。延長できる期間は最長で3年間です。

申請窓口
 住所地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)になります。

障害年金
 
一般的に年金を受給できるのは65歳からですが、がんと診断され心身に障害があれば早くから年金を受け取ることができる場合があります。それが「障害年金」です。
 初診日から1年半経過した後、日常生活で介助が不可欠であったり、仕事に著しい制限を受ける状態になった方が対象です。
 初診時に加入している年金制度と障害等級(障害の程度)により、給付される年金額が異なります。この障害等級は身体障碍者手帳の等級とは異なるため、手続きも別に行う必要があります。なお、受給要件として、初診日に年金に加入していること、一定の保険料の納付があることなどの要件を満たしている必要があります。

障害年金の金額

障害の程度

支給される年金の額(年間)

障害厚生年金

障害基礎年金

1

報酬比例の年金額x1.25           +配偶者加給年金額(226,300円)

983,100+        子の加算(226,300円)

2

報酬比例の年金                +配偶者加給年金額(226,300円)

786,500+        子の加算(226,300円)

3

報酬比例の年金額(最低保障額589,900円)

 

 

申請窓口

障害基礎年金

市区町村役場の国民年金の窓口

障害厚生年金・障害共済年金

年金事務局・職場の担当者

 

生活保護
 あらゆる手を尽くしても生活に困窮している状態の場合、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために必要な有夫を行う生活保護制度があります。その人が自立して生活ができるように援助することを目的としています。申請窓口は、市区町村役場の福祉窓口や福祉事務所になります。