局所再発の場合は、がんを手術で切除した後、必要に応じて放射線療法や薬物療法を行い、さらなる局所再発を予防します。
一方、遠隔転移の場合は、がんの治癒を目指すのではなく、がんの進行を抑えたり症状を和らげたりしてQOL(生活の質)を保ちながら、がんと共存するための治療を行います。
局所再発の治療
局所再発のみで遠隔転移のない場合には、治癒を目指して治療します。温存治療で残した乳房に再発した局所再発(乳房内再発)の場合は、通常、乳房切除術を行います。乳房切除後に胸の皮膚やリンパ節に再発した場合、切除できると判断されればがんの部分を切除し、放射線療法を行うのが一般的です。手術の後で薬物療法を行うこともあります。切除が難しい場合には薬物療法や放射線療法を行います。
遠隔転移の治療
(1)治療の考え方について
遠隔転移は、乳房から離れた部分に乳がんが出てきたものですが、雅俗で見ている場所以外のどこかにも目に見えないがん細胞が潜んでいると考えられます。現在の治療法では、これらの全身に潜んでいるすべてのがん細胞を根絶するのは難しいのが現状です。手術で目に見える部分を切除しても、目に見えないがん細胞は体のどこかに残ってしまい、体に負担をかけるだけなので、通常、手術は行いません。
遠隔転移の治療は、体全体に効果があることが必要ですので、薬による治療が基本となります。乳がんに有効なくすりには様々なものがあり、効果を見ながら治療を続けます。こうして、がんの進行を抑えたり症状を和らげたりすることができれば、QOL(生活の質)を保ちながら、がんと共存することができます。糖尿病や高血圧といった慢性疾患と同じように再発·転移がんの治療は、病気を抑えながら長く付き合うという戦略で進めます。再発の診断を受けた人の中には、このようなやり方で治療を続けながら、長い間お元気で過ごされている方が大勢います。
乳がんは、最初に発見された時もそうですが、急に進行することは少ないので、担当医とじっくりと治療について話し合いましょう。
(2)再発の治療に使う薬と使い方について
薬にはたくさんの種類があり、一つの治療法を行って効果があるうちはそれを続け、効果がなくなってきたら別の治療法を行う、といったやり方で進めます。治療法は①がん細胞の特性(ホルモン受容体の有無、HER2の状況)、②患者さんからだの状態(閉経の状況、臓器機能が保持されているかどうか)、③患者さんのご希望などを考慮に入れ、治療効果とQOL、治療によって得られる利益と不利益のバランスをよく考えて決めます。QOLを維持し、より良くすることは非常に大切です。
(3)さまざまな専門家の力を借りる
療養中は、痛みや苦しみなどいろいろな症状が出ることがあります。これらの症状を和らげるためには、専門的なケアが必要とされ、「緩和ケア」と呼ばれています。緩和ケアは、以前は「終末期に提供されるケア」とされた時期があったため、がんの治療ができなくなった人のための最後の医療·ケアと誤解されがちでしたが、現在は「がん治療の早期から並行して始めるケア」というように考え方が変わりました。一般病院でも緩和ケアチームという多職種の医療スタッフ(医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーら)がかかわることによって、症状緩和を行う様になってきたので、これらの専門家の力を借りるのも良いことだと思います。