配偶者への伝え方
「夫に迷惑をかけたくないから、夫には病気のことはあまり話さない」という方がいます。しかし、このような場合、夫は患者さんの状況を十分に理解していないために逆に不安になり「それは体に負担がかかるからやめたほうがいい」とか「風邪をひいたら大変だからできるだけ外に出ないように」などと過剰に反応し、それが患者さんにも伝わり、家族全員が心身ともに疲れてしまうことがあります。病気の経過の中ではあまり良くない情報もあるかもしれませんが、病気の現状や治療について、夫と情報を共有し、理解してもらうことが大切です。特に外来での治療が中心になると、患者さんが一人で受診することが多いかと思います。こうした場合も折に触れて、夫に治療の経過や担当医との話の内容を伝えるようにしましょう。
「夫に自分の気持ちを分かってもらうのは難しい」とか、「夫は私の気持ちを理解してくれないだろう」と考える方も少なくないかもしれません。自身の気持ちをそのままわかってもらうことはなかなか難しいものです。しかし、機会を見て自身の感じていること、病気への不安や心配事など心の内をまずは話してみることも大切です。
配偶者への伝え方(オーストラリア版)
もしあなたに配偶者がいるなら、診断の時に立ち会っていたかもしれません。もしそうでなければ、あなたが話す一番初めの人になるでしょう。配偶者はあなたの支えになるであろう人なので、初めから正直に話してよくのは良いことです。
関係性が変わるのは避けがたいことです。生命を脅かすような疾患と共に暮らすことは、しばしば夫婦をより親密にしますが両者の溝を一層深めてしまうこともあります。より多くのケアや支援を必要とすることに罪悪感を感じ、負担になることを心配している間は、配偶者もあなたのいない生活について考えることに落ち込んだり罪悪感を感じているかもしれません。この種の感情は、話すのが難しいですが、よりコミュニケーションをとるほど、チームになったように感じる機会が増えるでしょう。
両親への伝え方
診断について両親に話すことを考えるのは、大変なことでしょう。年齢やその時の状況にもよりますが、すでに両親は自身の疾患には適応し、あなたに社会の中での生活やケアの支援に関して頼っているかもしれません。両親にとって、成人した子供が命を脅かすような可能性のある疾患にかかっていると聞くことや、自然な順番とは逆らって、彼らより前に死んでしまうかもしれない、と聞くことは衝撃でしょう。
両親は、あなたの疾患についてすぐに話される必要はありません。それは緊急性を要しません。徐々に診断について共有することを選ぶかもしれないし、状況が変わったら近況を伝えてもいいかもしれません。両親の態度は、何年も前にさかのぼったり、場合によっては何十年も前にさかのぼるかもしれません。両親の理解の程度を確認し、治療の進歩について伝えましょう。
地域のサポートやあなたが診断について話した後両親が話すことができる人、特にあなたが電話でその知らせを話さなければならない場合には、について考えておくことも助けになるに違いありません。
両親に診断について話さないことを選択するかもしれません。おそらくそれは、両親との関係が複雑だったり、両親がそれに適応できないだろうと考えるからでしょう。あなたにとって、それが正しいと思うことをしましょう。そしてもちろん、時間の経過とともに違う風に考えるようになるかもしれません。
両親に伝える際のヒント
·わかりやすく、はっきりとした簡潔な情報を伝えましょう。
·情報を繰り返し伝える準備をしましょう。
·インターネットを使えるなら、信頼できるいくつかのウェブサイトのリンクを送りましょう。
·新しい情報について伝えたいと思っている家族と親しい友人のe-mailのリストの区分をまとめましょう。それからは、治療計画の変更やあなたや家族が必要としている支援、便利なウェブサイトへの新しいリンクなどを1通のメールで伝えることができるでしょう。
子供への伝え方
乳がんになった時、「病気についてどのように子供に説明をすればよいか」と悩む方は多く、特に子供が小さいほどその悩みは大きくなります。そのために大切なことは、まずは患者さんや夫が病気についてしっかり理解し、共通の認識を持っておくことが大切です。親の理解が不十分であったり、夫婦それぞれの理解が異なったまま子供に情報を伝えたりすると、正確な情報が伝わらず、そのため子供の不安やうつといった心理的負担が増えてしまう可能性があります。
子供に何を伝えたらよいかは、子供の理解度によって異なりますが、例えば小学生くらいであれば「お母さんが病気で、入院や通院が必要であること」、中学生くらいであれば、病気や治療の内容を少し詳しく説明し、高校生以上であれば他の大人と同じ内容を分かりやすくお話しするとよいでしょう。
また、伝える際には、率直に話し嘘をつかないこと、一度に全部を伝えようと思わず、情報を少しずつ理解できる範囲で何度も繰り返し説明することが重要です。そして「治療のために具合がよくないときはあるかもしれないけど、お母さんはいつもとかわらないこと」を伝えるのと同時に、心理的サポートを家族みんなで行っていくことが重要です。それにより、小さな子供でも病気のことをしっかりと受け止め、精神的に不安定になることは少ないと思われます。
子供への伝え方(オーストラリア版)
進行再発乳がんの診断を受けた多くの女性にとって、最もつらいのが、子供に関することです。私たちは全員、痛みや悲しみから自身の子供を守りたいと思い、子の診断が子供を傷つけるという思いは、強い苦悩をもたらします。これは大変つらいことです。しかし、どのようにこのことが子供に影響するかを変え、子供たちにとってより受け止めやすくするためにあなたにできることがあります。
子供は、逆境にもかかわらず活躍することができます。以下は研究結果に基づく、彼らの適応を助ける事柄です。これらのいくつかは、家族の中で機能するかもしれないし、それ以外の者はあなたに会うかもしれないし、無視してもいいかもしれません。あなたは自身の子供について知っているし、最終的には、子供たちを助けるために動く最適の人物でしょう。
まず第一に、しばしば大変なことですが、正直であることです。状況について話したくないと思うかもしれませんが、子供が後で自分たちに正直ではなかったということに気が付いたら、怒りを感じ、真実を知った時に不快に感じるでしょう。
子供達は、恐れも含めて、どのように感じたかについて話す機会があると最もうまく対処します。その為、あなたの子供にすべてがうまくいっていることを再保証することは、短期的に助けになるかもしれません。ほかのアプローチは、彼らの質問が何を意味しているかを考え、話を促す方法を見つけることです。
診断後の最初の数日から数週間は、あなたの感情はとても強いものでしょう。多くの女性は、子供の前で泣かないように頑張っていたと話します。これがあなたや子供にとって何を意味することを反映するのが助けになるかもしれません。悲しいときに泣くのは普通のことで、もし今までに子供の前で泣いたことがなければ、それは子供たちも同じように泣くことができないと解釈するかもしれません。あなたが落ち着いていないということを子供たちに見せれば、とても悲しい感情でも見せてもいいんだというメッセージを送ることになりますし、感情と親密さを共有することができるかもしれません。
あなたが秘密を作らないように、初めから子供に話すことは、子供たちの不安を減らします。小さな子供は、何かが起こった時の場合を考えて学校に行くことを時に心配するかもしれません。または、あなたの病気について学校でほかの子から聞くかも知れません。あなたの子供がいつもあなたから何が起こっているのかを聞いていれば、短時間あなたから離れることに関して心配になることが少なくなるでしょう。
矛盾がないことは、子供たちにとって重要です。いつもの寝る時間やいつもの習慣をそのまま続けることは大変ですが、もしあなたがそのようにできれば、子供たちが安全だと感じるのを助けることができるでしょう。最初に診断を聞いたとき、家族や友人たちが考える時間が持てるよう、子供たちを泊めてあげようと申し出るかもしれません。一般的に、家族の一群として、子供はあなたのそばにいるほうが好ましいでしょう。あなたから離れることは、子供を、特に小さい子供をより不安にさせてしまいます。
思春期の子供
あなたが家族のためにいつもしていることができない場合、あなたの10代の子供が手伝うべきだと感じるかもしれません。しかし自己中心的になるのが、思春期の通常の経過で、10代の子供は通常参加せず、頼まれないと動きません。発症の時から、あなたの10代の子供が自発的に動くことを期待するより、家の周りのことをだれがするのかを話し合っておくことが必要でしょう。あなたの診断が子供たちに与える影響について怒ったり、憤慨している10代の子供は「この家族は嫌いだ。この家族の中で生活することにうんざりする」などとひどいことを言うかもしれません。怒りに対して準備し、このような状況収める方法を考えておくことは、助けになるに違いありません。「そうねえ、この家族にとって生活は大変ねえ、うんざりもするわね」等と答えることは、一歩離れて穏やかに考える機会を与えるかもしれません。
あなたの思春期の子供があなたや家族とあなたに何が起こっているのかを話すことが心地よいと感じることが重要です。彼らは質問や心配事があるでしょうし、情報を必要としているかもしれません。あなたの状況にとって、正確で関連のある情報かどうか保証のないインターネットのような場所で情報を探すよりも、あなたのところに質問をしに来るほうが良いでしょう。
会話を始めるために
診断のすぐ後子供とする会話は、スタートでしかなく、時間の経過とともに続くでしょう。もし、あなたの状況が変われば、更新したくなるかもしれません。同様に、成長し、理解の度合いが変わったならば、彼らに言ったことを修正する必要があるでしょう。
家族や友人に話すこと
成人に話すときでも、あなたが進行·再発乳がんであることを伝えた時、相手にあなたが望むような反応をしてもらえないかもしれません。
何が起こるか心配することやあなたを失うかもしれない恐れは、家族や友人がどのようにかかわるかに影響するかもしれません。あなたの診断は、彼ら自身の死について考えさせるかもしれません。しばしば、最も心配のある人はなんと声をかけたらよいのかわからないかもしれません。何か悪いことを言って、落ち着かなくすることを恐れるあまり、何も言わないかもしれません。そして、最も必要とする時に離れてしまうかもしれません。
あなたがどのように感じ、何を望み希望するのかについて率先的に話す必要があるかもしれません。自身で苦しんでいるときにほかの人の感情について心配しないといけないのは不公平だと感じるかもしれませんが、一旦彼らがあなたはあなたのがんではない、つまり今まで一緒に笑ったり、冗談を言ったり、不平を言ったり将来について話したりしてきたのと同じ人物なのだということを理解すれば、信頼関係は発展し続けるでしょう。